199496 ランダム
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ふらっと

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Intermission 3

ミユキ・ムラサメ伍長は、シフトの空いた時間を使い、前回の補給のときにムラサメ研究所から送られていたデータや現在までの特殊戦技教導隊の戦闘記録を整理する為にルナツー内のシュミレーションルームへ向かった。
「ルナツー (LUNA 2)」スペースコロニー建設用の鉱物資源を採取するために、アステロイド・ベルトから月軌道上に運ばれてきた「小惑星」が採掘終了したのち、宇宙世紀0060年頃から地球連邦軍によって軍事基地に改造され、月とは地球を挟んで正反対の位置に存在し、第2の月(ルナ)という意味から名付けられる。核攻撃にも耐えられる厚い岩盤層の中にドックや整備・補給を行う施設を保有していた。
宇宙のほとんどをジオン軍に制圧された結果、宇宙において唯一の連邦軍の拠点である。
「あら、どうしたのエリオス少尉?」
真っ青な顔をして、シュミレーションルームからエリオス少尉が出てきた。
仮にもMS乗りの、しかもテストパイロットのエリオスが、真っ青な顔でシュミレーションルームから出てきたのである、何事かとミユキは思った。
「・・・目がまわ・・気ぼぢわ・・・」
両手で口元を押さえてエリオスは、トイレに向かっていった。ミユキの事など構っている余裕は無さそうだ。
エリオスに無視された格好になったミユキはシュミレーションルームに入ると、しかめっ面しているシフォンが居た。
「何か余程のことさせたの?よれよれで、外に出て行ったけど・・・」
「・・・試しにマグネットコーティング仕様のライトアーマー同士のシミュレーション戦をやりたかったので、エリオスにも使ってもらったんだが・・・」
それでかと、ミユキは思った。データ処理しているので解るが、シフォンの乗る機体は殆ど専用の調整がされており、乗り方も一般人の乗り方からは大きく外れている。強化された人間でもなければとても耐えられる乗りかたではないし、機体自体の反応速度を抑えるリミッターが、外れている。
通常機械で出したデータと実際に操作するのとでは違いがある。ライトアーマー自体が通常のジムより、軽量化により機動力の上昇が図られているジムのカスタムタイプの機体である。
「で、どうなの、シフォン調子は?」
そういって、コックピットシートの横に座りながらミユキはシフォンに話しかけた。
「少尉をつけろよ、ミユキ伍長・・・」
「前回の戦闘で私達の関係ばれてんだし、今、この部屋私達だけじゃない」
これは、何を言っても無駄だと思い、シフォンは諦めた様にため息をついた。
「なるほど、こりゃすごい、確かに通常の3倍は速度が出てるね・・・」
シミュレーション戦のデータをミユキは覗き込み更に納得した。
モスク博士によってマグネットコーティング仕様になったライトアーマーは天井知らずの反応速度を出すことが可能になっていた。だが、使いこなせなければ意味の無い数値でしかない。その為のリミッター処置であり、各パイロットに合わせて最適な機動性能に調整されているのである。
「まだポテンシャルは上があるはずなんだが」
「動きが良過ぎて他に負担がかかるわね、その辺のバランスのとり方が難しい?」
「シミュレーターだとGも軽く勝手が違い、参考になるデータが取れなかった」
やはり自分自身が、機体性能を引き出すためには実戦でなれるしかないのかと、シフォンは思った。そんな考えを見透かしたように、
「じゃ、試しにこれでも、やってみる?」
そう言うと、ミユキは一枚のディスクをシフォンに手渡す。
「これは・・・」
「連邦軍でニュータイプと噂される「アムロ・レイ」の実戦データを素にしたシミュレーターで、更にシミュレーターとはいえ、その「NT」を倒したユウ・カシマ中尉の最新シミュレーター・・・のコピー」
地球連邦軍第11独立機械化混成部隊の小隊長で、そのMS操縦技術にはMS乗りの間でも定評があり、以前シミュレーターで対戦したことがあったが、まったく相手にならなかった。
「そんなモノどうやって手に・・・」
そう言って、シフォンは言うのを止めた、恐らくミユキの実家であるムラサメ研究所から送られてきた品物であるのは容易に想像出来たからである。でもなければ、機密事項に近いそんなデータを普通のオペレーターが入手出来る筈がない。
「どう試してみる?」
「そうだな・・・」
その時、シミュレーションルームの入り口のドアが開き、ヨナとウモンの二人が入ってきた。
「いつになったら、新造戦艦見に行けるんです?!」
「ちょっと待ちなさい!!ウモン!使用中のランプが付いてるでしょ!!」
「ありゃ、先客がいた・・・」
「さっきからそう言ってるでしょ!本当に人の話を聞かないわね・・・」
ヨナはシミュレーションルームを使っているのがシフォン達なのに気が付き、
「申し訳有りません。お邪魔でしたね」
そう言ってヨナとウモンの二人はシフォン達に敬礼する。
ミユキ達も敬礼で返しながら、
「ちょうどよかった、ふたりとも30分後に今度配属になる新造艦の艦長に挨拶に行くぞ」
シフォンは二人の質問に答えるような形の答えを出した。
「あ、そうだ、それとミユキ伍長、以前からお願いしていたボールの強化プランなんですけど・・・」
ウモンは思い出したとばかりにミユキに質問する。
「それなら、おやっさんに話してあるから、後で格納庫行ってみなさい」
了解です、と答え、うれしそうにミュレーションルームを出て行く。その後をあわてて追いながら敬礼して、ヨナも後を追った。
「いったい何を企んでるんだ・・・」
「な・い・しょ♪」
シフォンの問いにこちらもうれしそうに返答するミユキの顔があった。


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